シンガポールのTSMCはどうなったのか?
【目次】
- シンガポールの半導体産業の成立
- シンガポールの戦略と成功要因
- シンガポールとTSMCの比較
- Chartered Semiconductor Manufacturingの創業と成長
- Chartered Semiconductor Manufacturingの課題と海外競合
- 中国企業の参入とChartered Semiconductor Manufacturingへの影響
- Samsungによる市場への浸透とChartered Semiconductor Manufacturingへの影響
- Chartered Semiconductor Manufacturingの経営状況と売却
- GlobalFoundriesによる買収とその後の展開
- シンガポール半導体産業の振り返りと展望
シンガポールの半導体産業の成立
🔸 シンガポール半導体産業の戦略と成功要因
シンガポールは、ビジネスに優れた環境を提供することで多国籍企業を呼び込むことを重視しており、外国人からの技術やノウハウの移転を通じて、地元の人材にもスキルを伝えることで産業の発展を図ってきました。シンガポールは高い教育水準と努力家な労働力を持つ人材を重要な資産と位置づけており、他の国々と異なり天然資源ではなく人的資本を活かした成長を実現してきました。
🔸 Chartered Semiconductor Manufacturingの創業と成長
Chartered Semiconductor Manufacturing(CSM)は、シンガポールの国営投資ファンドであるTemasekが主体となって設立されました。1987年には、アメリカの半導体メーカーであるSierra Semiconductorと技術移転契約を結び、非常に古いプロセス技術からスタートしました。しかし、独自の技術開発と拡大投資を通じて、CSMは最先端のプロセス技術を次々に追い抜き、シンガポールでの主要なファウンドリ企業の地位を築いていきました。
🔸 Chartered Semiconductor Manufacturingの課題と海外競合
CSMは、競争の激しい市場で生き残るために、価格競争力よりも他社との差別化が必要であることを認識していました。しかし、中国の低コストのファウンドリメーカーや韓国のSamsungなど、価格競争力に優れた競合他社が台頭しました。CSMの製品の差別化が困難になり、価格維持が困難になったため、粗利益率が低下しました。
🔸 中国企業の参入とChartered Semiconductor Manufacturingへの影響
中国の独立系ファウンドリメーカーであるSemiconductor Manufacturing International Corporation(SMIC)の参入は、CSMにとって大きな脅威となりました。政府の補助金と低コストな生活費を利用して成長したSMICは、低コストのプロセス技術を提供し、競争力がありました。同じ技術のライセンスを利用できることから、顧客は最低コストの提供業者に容易に切り替えることができました。
🔸 Samsungによる市場への浸透とChartered Semiconductor Manufacturingへの影響
Samsung Electronicsの参入は、CSMにとって大きな挑戦となりました。Samsungはメモリ事業で世界最大のシェアを持つグローバルな企業であり、その資金力と経験を活かして市場に参入しました。TSMCへの対抗策として、Samsungはプレミアムな顧客を獲得しました。これにより、価格競争が激化し、CSMの収益性が低下しました。
🔸 Chartered Semiconductor Manufacturingの経営状況と売却
CSMは、競争に遅れをとり、製品開発が遅れたため、経営的な困難に直面しました。シンガポール政府は何度も資金援助を行いましたが、数十億ドルという膨大な投資に追いつくことはできませんでした。最終的には、シンガポール政府は買収を支持し、Abu Dhabiの主権ファンドであるGlobalFoundriesによるCSMの買収が行われました。